束縛から自立し、人生を味わい尽くす生き方

【山形・米沢】夜桜と湯けむりの「賜の湯」で手にする密かな褒美

【山形・米沢】夜桜と湯けむりの「賜の湯」で手にする密かな褒美

米沢の夜に向かう労いの場所

時計の針は20時を回ったところ。
クライアントとの打ち合わせが長引いてしまいました。

しかし、実りのある仕事ができた日の夜は、心が軽いものです。

「今日の自分を労うのに、これ以上の場所はないな。」

そう直感し、米沢の夜道を車で走り出します。
向かうのは、僕がこの地で最も愛する湯です。

静寂が迎える、いつもの定位置

賜の湯の玄関内

目的の「おいたま温泉 賜の湯」は、夜の帳(とばり)が下りると一層その静けさを増します。
派手なネオンもなく、ただ静かに訪問者を待つその佇まいは、いつ訪れても心を落ち着かせてくれます。

「こんばんは」と声をかけると、受付の初老の男性がいつもの穏やかな笑顔で迎えてくれます。
この変わらないやり取りが、まるで自分の書斎に戻ってきたかのような安心感を与えてくれるのです。

賜の湯の男湯の暖簾

暖簾をくぐり、浴室へ。
広々とした内湯の中央には大きな石の玉が鎮座し、そこから源泉が惜しげもなく湯船へと注がれています。
その光景は、これから始まるお湯との対話への期待感を静かに高めてくれました。

湯けむりの向こうに揺れる、淡いピンクの花びら

賜の湯の温泉利用状況について

まず、内湯でゆっくりと体を温めます。
やわらかな湯が肌を包み込み、鼻腔をくすぐるのは、温泉らしい確かな塩の香り。

僕は温泉を訪れる際、泉質や効能よりもまず「香り」を重視する、おそらくは少数派の人間です。
その点、ここの湯は僕の嗅覚をいつも裏切りません。
完全な源泉掛け流しだからこそ味わえる、本物の香りです。

じわりと汗が滲んできたところで、いつものように水風呂へ。
冷水で一気に肌を引き締め、そのまま露天エリアのデッキチェアへと向かいます。
火照った体に夜風が心地よく吹き抜ける。

ふと、見上げた視線の先に、思わず息をのみました。

満開の夜桜です。

そよ風が枝を揺らすたび、淡いピンクの花びらが夜空を舞う。
自分の体から立ち上る湯気もまた、その幻想的な光景に溶け込んで、桜色に染まっているかのように見えました。

まるで夢の中にいるような、美しく、静かな時間。
今日の仕事の成功を祝う、最高の褒美ではないでしょうか。

源泉を飲み干し、自分の時間をデザインする帰路へ

賜の湯の飲泉所

極上の交互浴を心ゆくまで堪能し、浴室を後にします。
湯上がりのさっぱりとした体に、館内の冷たい水を流し込む。

そして、帰る前のささやかな儀式がひとつ。
玄関脇にある飲泉所で、源泉を一杯いただくのです。
体の中からお湯の香りと味を確かめ、今日という一日の温泉との対話を締めくくります。

さて、この心地よいけだるさと共に、ゆっくりと夜道を走りましょうか。

明日の予定を気にすることなく、ただこの余韻に浸る。
他人に時間を握らせるのではなく、自らの手で人生の時間をデザインしていく。
その静かな満足感を噛み締めながら、僕は米沢の夜を後にするのでした。

施設情報

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