束縛から自立し、人生を味わい尽くす生き方

【宮城・川崎町】新緑の「やすらぎの湯」で嗅ぐ至高のモール香。

【宮城・川崎町】新緑の「やすらぎの湯」で嗅ぐ至高のモール香。

カレンダーの空白に、川崎町の香りを書き込む

力強い新緑の芽吹き

昨日、ひとつの大きなプロジェクトが無事に形になりました。
集中と解放。
その心地よい疲労感のなかで、僕の頭に浮かんだのはたった一つのことでした。

「あの香りを浴びたい」

僕にとってのホーム温泉とも呼べる場所の、あの唯一無二の香りです。

誰に断る必要もありません。
スケジュール帳の空白は、僕自身が埋めるためのもの。
思い立ったが吉日とは、まさにこういう時のためにある言葉なのでしょう。

春だというのに、まだ山肌に残雪が張り付く季節。
しかし麓では、力強い新緑が芽吹き始めています。

白と緑のコントラストが美しい山々へ向けて、僕は静かにクルマを走らせました。
平日の午後の道路は、まるで僕のためにあるかのように空いています。

シルバー人材センターの優しい笑顔が迎える、町の湯治場

川崎町健康福祉センターの外観

宮城県川崎町にある「やすらぎの湯」。
正式には川崎町健康福祉センターという、町営の施設です。

きらびやかな看板も、最新の設備もここにはありません。
しかし、僕が求めるものは、いつもここに静かに満ちています。

「こんにちは」

受付で迎えてくれるのは、いつもシルバー人材センターのお姉さまです。
気さくな世間話に心が和みます。
こういう人の温かさに触れると、自分がこの町に受け入れられているような、不思議な安心感に包まれます。

派手さはありませんが、清潔に保たれた館内。
訪れる人の多くは、顔なじみの地元の方々でしょう。
観光地の喧騒とは無縁の、穏やかな時間が流れています。

樽平酒造『住吉』の如し。露天風呂で木の香りに溶けていく

温泉好きにはいくつかのタイプがある、と僕は考えています。

泉質にこだわる成分の探求者。
景色や雰囲気を愛でる癒やしの旅人。
そして、僕のような「香り主義者」。

鼻が利かない日は、温泉の楽しみが半減してしまうほど、僕は香りを大切にしています。

ここの内湯は、衛生管理上しかたのない塩素臭が少しだけ鼻につきます。
しかし、僕の目的地は、その先の扉の向こうにあります。

露天風呂の湯船に体を沈めた瞬間、僕は思わず深く息を吸い込みました。

これです。
僕が求めていたのは、この香り。

モール泉のような、ふくよかな木の香り。
鳴子温泉郷などでよく感じられる「アブラ臭」は一切含まない、純粋なウッドアロマ。

言葉で伝えるのは難しい。
強いて例えるなら、山形の銘酒・樽平酒造がつくる樽酒『住吉』のような、気品ある芳香です。

湯はやや黄色みを帯びた無色透明。
時折ゆらりと茶色い湯の花が舞います。

37℃ほどのぬる湯は、いつまでも浸かっていられる心地よさ。
見上げれば、川崎町の空がどこまでも広がっています。

しばらく独り占めしていた湯に、地元のご主人たちがやってきました。

湯船で交わされるのは、町内の誰それの噂話。
僕は目を閉じ、その会話をBGMにただただ香りに集中します。

誰かの人生の断片が、心地よい湯気とともに立ち上っては消えていく。

20人くらいまでは数えていたでしょうか。
でもそれ以降は思考が止まり、感覚だけが研ぎ澄まされていく時間。

気づけば、1時間半もの間、ぬる湯と外気浴を繰り返していました。

畳の大広間でまどろむ。誰にも急かされない時間の使い方

ここの湯上がりは肌がすべすべになります。
ぽかぽかとした感覚が長く続き、体の芯から温まっているのが分かります。

火照った体を冷ますのは、畳敷きの大広間です。

置かれた長テーブルでは、思い思いの時間を過ごす人々の姿。
談笑する方々もいれば、僕のように一人、静かに壁にもたれかかる人もいます。
心地よさそうないびきも聞こえてきました。

誰も時間に追われていません。
タイパや効率といった言葉が入り込む隙のない、ゆったりとした空気。
これこそが、僕が「贅沢だ」と感じる瞬間です。

十分に体を休ませてから、僕は再び新緑を眺めながら帰路につきました。

カレンダーではなく、自らの「欲求」に従って過ごした平日の午後。
こうして心と体を満たすことが、また明日から仕事を創り出すための、何よりのエネルギーになるのです。

今回レビューした施設の情報

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る