窓辺の岩手山と、思いつきのドライブ

週末、孫の顔を見せるために実家へ帰っていました。
朝ラーを食べ終え、ふと窓の外に目をやります。
雄大な岩手山が目に飛び込んできました。
美しい姿です。
その瞬間、山あいの酸性泉に浸かりたくなりました。
よし、行こう。
そう思うが早いか、僕は車のキーを握っていました。
高速道路に乗り、一路八幡平へとハンドルを切ります。
自分の直感に従い、行きたい時に行きたい場所へ向かう。
それが、何よりの贅沢だと知っているからです。
世間の喧騒が届かない場所。森乃湯の佇まい

盛岡市内から車を走らせること約1時間。
たどり着いたのは、「八幡平温泉館 森乃湯」です。
山あいに静かに佇む施設です。
中へ入ると、大きなストーブのある食事処が目に留まりました。
どこか懐かしく、心がほっとする空間が広がっています。
無料の休憩スペースや、2階には有料の大広間も用意されています。
過剰なサービスはありません。
素朴で温かい空気が流れています。
見えない景色と、確かな土地の空気
浴場に入ると、大きな窓から明るい光が差し込んでいました。
内湯は広々としており、端には寝湯も備えられています。
しかし、僕の目当ては露天風呂です。
露天風呂はこじんまりとした造りです。
塀に囲まれ、ちょっとした庭がしつらえられています。
屋根はなく、見上げれば空が広がっています。
よくある温泉レビューで「景色が見えなくて残念」といった声を目にします。
しかし、僕にとって露天風呂の本質は視覚情報だけではありません。
外とつながる空気感こそが、最も重要なのです。
肌を撫でるその土地の風。
耳に届くかすかな葉擦れの音。
その日の温度や湿度。
景色が見えなくとも、確かな土地の息吹を感じることができます。
お湯は内湯、露天ともに42℃。
さらりとした湯ざわりが肌を包み込みます。
そして、鼻腔をくすぐるのは、かすかに金気のある硫黄臭。
僕は自他共に認める「香り主義者」です。
このほどよい硫黄の香りが、源泉かけ流しの湯であることを静かに証明しています。
湯に浸かり、目を閉じ、深く深呼吸をします。
火照った体は、キンと冷えた水風呂で引き締めます。
熱い湯と冷たい水の交互浴が、細胞の隅々までを目覚めさせます。
僕はただ独り、この静かな空間でお湯との対話に没頭しました。
思考がゆっくりと溶けていきます。
さらりとした肌と、満たされた心

湯上がりです。
肌はさらりとしています。
心地よい脱力感が体を包みます。
廊下でスタッフの方とすれ違いました。
軽く湯温談義を交わします。
こういう何気ないふれあいが嬉しいものです。
人の温もりに触れる。
これもまた湯巡りの醍醐味です。

森乃湯からの帰路、朝とは違う角度の岩手山を望みます。
やっぱり。
美しい。
盛岡近郊で、ふと源泉かけ流しの湯が恋しくなったとき。
この森乃湯は、静かな満足感を与えてくれる確かな選択肢です。
今日という一日を、自分の意志で選び取った。
その事実が、心地よい疲労感とともに、僕の足取りを軽くしていました。
施設情報
- 施設名称:八幡平温泉館 森乃湯
- 住所:〒028-7302 岩手県八幡平市松尾寄木第1地割590−280
- Googleマップ:https://maps.app.goo.gl/uxoDgnEet999y1Kx7
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